2013.12.31 [火] 競技大会について

トライデントコンピュータ専門学校が最初に大会に参加したのは、2008年の第3回若年者ものづくり競技大会・第46回技能五輪全国大会でした。当時はCGイラスト学科の一専攻だったWebデザイン専攻を“学科”として新設するということで、Web制作会社、他専門学校、Webデザイン雑誌編集部など、さまざまな方々に意見を伺っていました。その折、東京の日本電子専門学校で、初めてその存在を聞くことになりました。
カリキュラムを構成するうえで困っていたのが、資格・コンテストなど学外からわかりやすい実績が、Webデザインの場合あまりないことでした。ゲーム、CGやグラフィックデザインであれば、学生を対象としたコンテストが大小たくさんありますし、プログラムやITでは資格取得が知識・技術の証明であったり、就職にも影響してきたりします。しかしWebデザインには、それがありませんでした。
そんな考えもあり、どういった大会・内容なのか経験してみようということで、CGイラスト学科の中でHTMLとCSSでWebサイト制作ができる学生に参加してもらったのが2008年でした。その初めての挑戦した技能五輪全国大会で敢闘賞を獲得できたということも「やればメダルが獲れるんじゃないか」と参加し続けるきっかけにもなったと思います。
また実績ばかりが目的ではなく、同じ年代の同じような勉強をしてきた者が集まって、同じ仕様・時間、同じ環境で制作をするということの有意義さも感じました。ガチでその時の実力が順位に反映されますので、参加後の学生の意識が変わります。人数の少ない学科ですので、全国にはまだまだ頑張っている学生がたくさんいることを知ることで、外から自分を意識することに繋がっているのではないでしょうか。いくらインターネットで繋がっているとはいえ、ついついクラス内の実力で満足してしまうものですから。
そういう意味でも、もう少し大会期間中に参加者同士が交流する機会がふえるといいなと感じています。
冒頭が少々長くなってしまいましたが、それではトライデントの取り組みを紹介していきます。
競技大会への道[予選]
若年者ものづくり競技大会(※以降、若年者大会)と技能五輪全国大会(※以降、技能五輪)は、年齢で参加資格が分かれています。若年者大会は20歳以下、技能五輪は23歳以下からとなっています。
まずは、両大会への参加者希望者が「ウェブデザイン技能競技大会」の若年者部門(若年者予選)・一般部門(技能五輪予選)に参加して、通過すると出場ということになります。
また、2013年からは若年者大会へは各施設から2名、技能五輪へは5名までと規定されています。

トライデントでは、参加を希望する1年生は若年者大会、2年生は技能五輪に参加するようにしています。若年者大会は夏休みの8月に開催されており、対策訓練や大会が就職活動と重なりどちらも中途半端になってしまうことを懸念して、現在はこのようにすすめています。しかし、とく絶対と決めているわけではありません。
ウェブデザイン競技大会(予選)は、インターネットスキル認定普及協会が管轄していますので、概要や日程などはメールでもお知らせしてもらえます。各種概要などの発表はそちらになりますので注意が必要です。
◇若年者ものづくり競技大会予選(若年者部門)◇
競技大会予選は、5月中旬に行われるため参加希望者の募集は4月中となります。1年生はまだ入学した間もないためHTMLやCSS、グラフィックソフトの使い方もままならない学生ばかりです。よって高校時代もしくは入学前にWebサイトの制作経験がある学生が中心になります。
経験者とはいえ、競技大会は普通の制作と内容や制作時間も違いますので、参加することが決まってからは、過去の課題を元にして授業後に予選会の対策授業を行います。(※2013年12月現在、課題が公開されています。ずっと公開しておいてほしいです)
以前は、Webページの制作でしたが、昨年からモジュール課題になりました。しかし、対策授業では、どの部分作っているのか理解するためにWebページ全体を制作してもらっています。また、事前に課題発表があるのですが、ここ最近はギリギリになることが多いため、前年の本番(若年者ものづくり競技大会)の内容も考慮して対策することになります。
◇技能五輪全国大会予選(一般部門)◇
スケジュールは若年者部門から1週間ぐらい遅く行います。技能五輪予選の場合は、HTML+CSSのモジュールに加えて、PHPとデータベースによるサーバーサイドの課題も加わりますので、事前に対策授業をするということは変わりません。若年者部門と同様、インターネットスキル認定協会のサイトに昨年の課題が公開されています。
今年は、翌年に行われる「あいち技能五輪大会2014」にともなう特別訓練助成金などがありましたので、3月に「PHP特別講座」を行なうことができました。所属している自治体によっては、支援制度がある場合はありますので、各県の職業能力開発協会に問い合わせてみるといいかもしれません。
若年者大会、技能五輪ともに対応ブラウザ、HTMLやPHPのバージョン、使用するソフトウェアなど、授業の内容と違う場合が多くありますので、事前対策は必ず行うことになると思います。そういった意味でも早めの準備や資料の収集は必要だと思います。
競技大会[若年者ものづくり競技大会]
約2週間後(6月初旬)には、結果の連絡が届きますので、本戦へ通過した学生は、本格的に対策をしていくことになります。毎年8月初旬に大会が行われますので、6月から始めても2か月ぐらいしか対策ができません。また、授業の課題も多くなってくるこの時期ですので、授業課題の様子を見ながらできるかぎり対策も行っていきます。
若年者大会本戦は、中央職業能力開発協会(JAVADA)の管轄になりますので、そちらのページの過去課題があります。また、若年者ものづくり大会では上位3名までに入賞すると技能五輪全国大会への出場権を得られます。よって、技能五輪の前年の課題からの影響もありますので、対策として課する課題の内容にも参考にします。
今年は、FlashアニメーションがなくなりJavaScript(jQuery)でのアニメーションおよびスマホへの対応が盛り込まれてきました。HTML5・CSS3の使用や対応ブラウザにGoogle chromeが追加されるなど、仕様変更が多い年となりました。
若年者ものづくり競技大会の評価項目と配点は以下のとおりになります。
項目 | 内容 | 配点 |
1 | プランニングとデザイン | 30 |
2 | クライアントサイドの実装 | 40 |
3 | ユーザビリティ・アクセシビリティ | 20 |
4 | プレゼンテーション | 10 |
大会初日は、会場の下見および機材の動作確認、本番課題の発表となります。本番は事前課題より30%ほど細かな仕様変更が行われますので、宿舎に戻ってから対応することになります。場合によっては夜中までかかることもあります。配点からもわかる通り「クライアントサイドの実装」(=HTML+CSS+JavaScript)の割合が大きいので、事前対策授業の段階から重点的に勉強をします。
◇若年者ものづくり競技大会対策◇
- 正しいHTML+CSSのマークアップ、alt属性・コメント記載
- jQueryの使い方及びJSONデータの取得
- Photoshop,Illustrator,Dreamweaverの操作(ショートカットや効率化)
- スマートフォン対応(viewportなど)
- ビジュアルデザインや振る舞い方
とはいえ、トライデントはここ数年、うまく対応できていないのが実情です。
大会の様子や本番の課題については、このブログの若年者ものづくり競技大会のエントリーをご覧ください。
競技大会[技能五輪全国大会]
技能五輪大会は、毎年11月もしくは12月に行われます。本来、対策訓練は数か月ほど前から行いたいのですが、インターンシップ中であったり、就職活動中の場合もありますので、理想通りにはいきません。それでも1か月前までには始めます。過去課題をみてもわかる通り、技能五輪大会は下見1日、競技日は2日となります。今年はバックエンド課題が1日とWebサイト制作(スマホ対応)が1日でした。
技能五輪全国大会の評価項目と配点
項目 | 内容 | 配点 |
1 | プランニングとデザイン | 8 |
2 | 画像作成・修正・最適化 | 8 |
3 | レイアウト・ナビゲーション・ユーザインタフェースデザイン・ユーザビリティ | 10 |
4 | ウェブプログラミング | 22 |
5 | クライアントサイドの実装 | 30 |
6 | マルチメディア表現とクリエイティビティ | 8 |
7 | アクセシビリティ | 8 |
8 | プレゼンテーション | 6 |
若年者大会と同じように事前発表課題から、仕様の変更が30%ほどありますので、初日は夜遅くまで対策することになります。配点は「ウェブプログラミング」と「クライアントサイドの実装」で半分以上の割合となります。2年生で競技大会に参加するような学生であればクライアントサイドに関しては、ほぼ問題なく実装できるようになっていますので、対策はほとんどPHPとデータベースの特訓となります。
愛知県の場合、技能五輪大会の出場選手には特別訓練支援金制度がありますので、講師をお願いして週に1回ほど特別講義を行うことができます。
◇技能五輪全国大会対策◇
- PHPとデータベース
- スマートフォン対応(レスポンシブウェブデザインなど)
- セキュリティ
- Webサイト設計とユーザーインターフェイス
- +α(オリジナリティ)
さらに時間配分や効率のいいモックアップ制作など、事前に準備することはたくさんあります。
結局のところ、どれほど特別授業や資料を用意しても、実際に競技する学生の頑張りによるところが大きいと思っています。やる気が上がってこなかったり、軽く考えて臨んだりすると、中途半端な取り組みになってしまいます。また、最後のプレゼンで出来上がった作品を発表する姿がリアルにイメージできることやリラックスできるという点で、過去に競技大会に参加していることが有利になるということもあると思います。
よって、1年目で若年者ものづくり競技大会に出場して経験を積み、2年目で技能五輪全国大会に出場して入賞を目指すというステップが理想的ではないでしょうか。
競技者の資質について
確かに若年者大会は、JavaScriptでの操作が不可欠になり、技能五輪ではPHPの比重が大きくなっています。しかしWebサイト制作などに関してはPhotoshopでのモックアップ制作もありますので、得意不得意はあってもデザイン・プログラムともにバランスよく取り組める人がいいでしょう。向き不向きなんて、そんなにすぐわかるものではありませんので嫌いでなければすべて頑張ればいいと思っています。
まとめ
さて、今年は学生の頑張りと、様々な方々のご協力のおかげで良い成績を収めまることができましたが、昨年は出場すらしていないので、そんな偉そうなことは言えないのですが、参加し始めて5年経ち、ひと区切りとしてトライデントの取り組みをまとめておきました。他の施設のことはわかりませんが、続けて出場および入賞している学校や企業は、中長期的に何らかの対策を行っていると思います。
もうひとつ思いたった理由に、今年、最終日のプレゼンテーションの時、最初にしゃべった本校の学生が反省コメントを入れたばかりに、続いた数人が大反省会になってしまって、申し訳なかったのですが、その時に「実力差を感じました」という言葉が聞かれました。せっかく代表として競技したのに、なんか切ないなぁと感じたのが心に残っていました。新しく参加を検討している学校や初参加の学校などでは、対策に関する情報が少ないためなのか思ったように学生の実力が発揮できていないのではないかと感じました。求められるレベルも上がっていますので、トライデントでは計画的に対策を練って臨んでいますし、時間と労力もかけています。
今回の技能五輪全国大会の各競技の得点分布図が技能五輪サイトに公開されていますが、他の競技同様の点数分布になると参加した選手にとって、もっといい経験になるのではないでしょうか。

いよいよ、来年は愛知県で技能五輪全国大会が行われます。2年に1度の世界大会予選ともなりますので、ぜひ学生には挑戦して、精一杯頑張ってほしいですね。
それでは、長くなってしまいましたが本年もありがとうございました。良いお年をお過ごしください。