■9月8日(木曜日)CEDEC2011最終日のレポートです。
□基調講演:情報化社会、インターネット、デジタルアート、日本文化
猪子寿之氏(
チームラボ)
デジタル技術とさまざまな分野とのコラボレーションで、新しい表現を世に送り出しているチームラボの猪子さんの講演です。auとのコラボレーション「au design project actface」は大好きな作品でした。
今回の講演は、チームラボがこれまで行ってきた「デジタルアート作品」と「ゲーム」そして「日本文化」を結びつけ、今後の世界での日本人としての強みを再認識できる内容でした。
●「日本画」のレイヤーと「西洋画」のパースペクティブ
日本画の平面的世界は、実は日本人独特な空間認識ではないか。日本庭園などにも、その考えは活きている。また、マリオブラザーズなどの平面横スクロールゲームにも見受けられ、他の国とは違うゲームとして確固たる地位を得ている。
●日本人は目的より行為にこだわりを持つ
茶道を例に、日本人はお茶を美味しく飲むという目的よりも、その精神世界の完全性に注力している。これは現実世界において目的を見受けられないゲームの世界にも通じる「行為を消費している」
●日本人は完全なバランスよりも、不調和の美しさを求める
日本庭園の石の配置の微妙なズレのもつ美しさや、キティちゃんをかわいいと感じる日本人の美意識は世界の中で特質である。しかし、その美しさやかわいさ、格好よさは外国人にも伝わる。
今後、文化的なものの優位性が重要となり、自然と共存してきた日本人にはその素質が備わっているということでした。
また質問に中に「作品を見た外国人の意見について」は「外国人の話は聞かない!」ときっぱり言い切っていたのは、気持ちよかったですね。私は「自分を信じろ!」と受け止めました。
□セッション:世界の心をつかむスマートフォン時代のゲームとは
田中良和氏(グリー)、庄司顕仁氏(タイトー)、手塚武氏(カプコン)、アラ・マック・グロウエン(EA)、新清士氏
内容が盛りだくさんで、時間が少なく感じました。各スピーカーの現状認識と今後の展望を話されました。
各スピーカー毎に箇条書きで、記しておきます。
→手塚さん(
カプコン)
iPhoneのほうが課金のグローバル数値が取りやすい(Apple storeがあるため)
Apple storeのユーザーレビューはかなり読み込んでいる。
低価格になっており、ソーシャルゲーム化が進んでいる。
カプコンは元々アーケードゲーム制作から始まっているので、ロケーションテスト(ゲーセンでの実地テスト)などユーザーテストは以前から行っている。
解析データなどの数値化されたものばかりに、惑わされてはいけない。
スマートフォンでゲームをする人は、現在のコアゲームファンではなく一般の人で属性が違う。今後、その一般の人が圧倒的に増えていく。
→庄司さん(
タイトー)
グローバル=ものすごく、どローカルに。
●成功するゲームのポイント
1.遊びの本質(ゲーム性の面白さ)
2.見た目、世界観、印象
3.金額
ゲーム性さえブレなければ、十分通用する。
→田中さん(
グリー)
数値化される部分が、多くなってきている。
●今は革命中
1.常にONLINE
2.ダウンロード販売
3.販売手法(バラ売りが可能に)
世界の通信キャリアは、約500社。この全社と関係を持っている会社は現在ない。今後、いかに多くのキャリアとコネクションが築けるか、マンパワーと資金が必要になる。
ゲーム産業はものすごい拡がりをみせてくるだろう。さらにインターネットは見る→操作するものに変わる。そして、全世界でのプレイ人口は増大する。
コンピュータアーキテクチャが全家電との融合は実現するだろう。
世界中の文化を考えながら、KPIをカスタマイズする必要していくべき。
→アラさん(
EA)
西洋でのソーシャルゲームは始まったばかり。
ゲームの原点回帰。
本当の友人との関わりが重要になる→よって、人との関わりが深まってゆくような、ゲームが今後増えてゆくかも。
全員、今後のスマートフォンの普及とソーシャルゲーム産業の拡大は間違いないとの考えているようでした。その中でいかに勝ち残ってゆくのかがポイントだと感じました。
□セッション:カプコンサウンドが考える専門家との連携
岸智也氏、北村一樹氏(カプコン)
そういえば、Web系のセミナーではなかなかサウンドに関するセッションがありませんので、CEDECならではのサウンドセッションに参加しました。未知の世界でしたので、これは本当に面白かったです。
内容は、カプコンサウンドが3DSゲームソフト「
謎惑館」で使用した立体音響を実現するために、専門家の協力を得た時の、スムーズな仕事の仕方のポイントに関するセッションでした。
●立体音響を実現するために協力いただいた専門家
「
The Otophonics Factory」武井純孝氏
「
Arnis Sound Technologie」
●アドバイザー
日本大学短期大学部 建築学科 羽入敏樹氏
株式会社ソナ:オンフューチャー株式会社 中原雅考氏
話の内容は、専門家の方々と気持ちよく、高クオリティの作品を制作する上でのポイント的な話でした。
技術的な所はよくわからなかったのですが、もうこの「立体音響」っていうのが、すごく面白そうでセッション中も早くイヤホンを付けて、実際に体験したくて仕方がありませんでした。もちろん、終了後すぐに楽しませていただきました。
この立体音響を使用した音は、「謎惑館」のサイトで視聴することができます(※ヘッドフォン使用)。
□セッション:進化する「ADX2」
櫻井敦史氏(CRI・ミドルウェア)
前のカプコンサウンドのセッションで、サウンドの面白さを垣間見たので、CEDEC大賞2011のサウンド部門で最優秀賞を受賞した「
ADX2」のセッションに参加しました。
デモを拝見すると、様々なサウンドを簡単な操作で実現でき、実装も簡単そうな印象です。
Unityとの連携も今後展開する予定(デモがありました)で、これでゲーム制作の敷居が下がるかもしれません。
体験版CDが貰えましたので、触ってみようと思います。
2日間、初めてゲーム業界のカンファレンスに参加してきたのですが、ソーシャルネットワークに飲み込まれているという印象でしたが、違う分野の話も聞け勉強になりました。本当の意味で、今年のテーマ「Cross Border」に近づいて欲しいですね。
長文失礼しました。