2010.06.29 [火] CG業界研究「伊藤頼子さん」
伊藤頼子 氏
http://www.yorikoito.com/home.html
ビジュアルディベロップメントアーティスト(米国・サンフランシスコ在住)
サンフランシスコの Academy of Art University を卒業後、ゲーム会社などを経て1997年にDreamworks Feature Animation入社。2002年からは PDI-Dreamworks Animation社に移籍し、3DCG映画やアニメ映画にビジュアルデベロップメントとして携わる。
【制作に関わった主な作品】
「マダガスカル2/Madagascar: Escape 2 Africa」(2008年)
「森のリトルギャング/Over the Hedge」(2006年)
「マダガスカル/Madagascar」(2005年)
「シュレック2/Shrek 2」(2004年)
「スピリット/Spirit: Stallion of the Cimarron」(2002年)
「エル・ドラド 黄金の都/The Road to El Dorado」(2000年)
「プリンス・オブ・エジプト/The Prince of Egypt」(1998年)
本当にたくさんのお話をしていただき、講演された2時間弱の時間があっという間に過ぎていきました。
●ビジュアルデベロップメントの仕事
日本では、コンセプトアートともいわれる仕事ですが、ハリウッドではコンセプトアートというと、意味がちがってくるそうです。映画の初期段階での視覚デザインを行う仕事。プロダクションデザイナーやアートディレクターから、指示された曖昧な世界観をビジュアル化する。デザインという言葉を頻繁に使われていました。キャラクターもデザインする事も稀にあるそうですが、キャラクターデザイナーは特殊な人しかなれない、別格ということです。
●渡米から就職
もともと、アメリカ的なイラストレーションが好きで「絵を描く仕事に就く」という夢を抱いて、絵の勉強のためにアメリカのアートスクールに留学されました。卒業後は、帰国は考えずに絶対、アメリカで就職すると決め、就職活動をされていたそうです。“Go get girl”と呼ばれるほど、積極的に就職・転職活動をされていたそうです。実はディズニーにも採用が決まっていたそうですが、日本人ということで叶わず、ゲーム制作会社へ。そこでは、デジタルペイントの技術を学ぶことができ、その後に活きたそうです。知り合いの伝手でドリームワークスへ転職、この時の課題がトレースで2・3日ほど徹夜で描きあげたそうです。
●マダガスカル2での仕事
マダガスカル2でのアートワークを見せて頂きながら、説明されていきました。
背景デザインで認められていた伊藤さんは、木のデザイン、アフリカの情景などたくさんのデザインを描いては修正を繰り返しており、ボツになった作品も、素晴らしいものでした。しかし微妙にディレクターの考えとずれているということで、微修正がされていました。ほとんどのデザイン画に、写真などの資料が添付され、世界的なデザイナーでも資料を見ながら、それを参考にして制作をします。(この辺は学生にも、見習ってほしいところです。)
「一から生みだすのではなく、いろいろな資料から組み合わせて、新しいデザインを生み出す」
マダガスカルのデザインをする上での、参考資料としてたくさんのイラスト・デザイン画を見せて頂きました。(時間の都合上、すべては見れませんでしたが、本当に莫大な量です)
「今はインターネットがあるので、どんどんダウンロードしてフォルダを作りましょう」ね。
●その他
学生に対しては、チャンスを逃すなという話と、世界中の作品など、たくさん見ましょうという事を言われていました。ポンポンとあの作品見た?この作品見た?という投げかけに、学生はまったく付いていけなかったではないでしょうか。
若い頃から関連分野にしか興味を示さないのは、非常にもったいないです。さまざまな分野のデザインから学んでいくべきだと改めて感じました。
世界のトップレベルのクリエイターがどんな考えで、どんなトレーニングをしているのかを聞けた貴重な時間となりました。
講演を企画・運営した岩野先生お疲れ様でした。
アメリカからお越しいただき、素晴らしいお話をしていただいた伊藤さん、ありがとうございました。